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母の随筆「S様へ 三」

徳島の母の書いた現代詩です。お楽しみください。

S様へ 三

        松茸狩りに招待されました

        一週間ばかり山に入らず

        温めてくれてあったのです

        さほど高くない山ですが

        道というほどのものは無く

        先へ行く人のねた笹や雑木の小枝が

        ばしっと顔にきたりして 道なき道を

        かき分けていくといった具合です

そのうち水の流れる渓添いを

のぼっておりまして

        男達が

        かんてきや炭や肉や卵やスダチを

        背負ってきたわけがわかりました

        この水を使って松茸飯や

        焼き松茸をして食べようという訳です

やがて

ぷうんと松茸の香りが漂うて来ました

男達が背中から荷物をおろし始めました

と 足許に

あった!

生えておりました

五本いや六本 七本 

かたまって

頃かげんの傘を開き始めたのから

        つぼみのものまで

ほかっとして山肌に子狸が頭を並べた様に

生えておりました

掘るのが惜しい 

採るのがおしい

そんな思いです

土に指を入れるとかなり手応えのある力で

松茸はしがみ付いておりまして

ひとつずつ採りました

        松葉をかぶり羊歯に紛れていた松茸は

三十糎程もあり大きなかさをひろげ

傘の二処ほどが裂けて反り返って

おりました

松葉と同じような色なので

        うっかり見落とす処を

見つけた事が嬉しくてたまりません

松茸の生える場所は

毎年決まっているようで

勝手を知った男達は 

すぐさま籠を

松茸で山盛りにし

かんてきに火を起こし

大きな釜に米をとぎ

松茸御飯の出来るまでは

山盛りの松茸を太い男の指で裂き

かんてきの金網の上にのせ

少し

焦げ目のついたのを

        スダチと醤油で食べるのです

そして

これこそ本当の日本の味だと

しみじみ思うのです

しあわせだな 

と思うのです

そうです

本当にそうなんです 

せめて

今夜はそんな夢を

見ることにしましょうか

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